婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について、持ち戻し免除の意思表示があったものと推定することが規定されました(改正民法903条4項)。
この規定により、生存配偶者の老後の生活保障が厚くなったといえます。
(1) 家庭裁判所に対する申立てによる場合
家庭裁判所は、遺産分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができることが定められ(改正家事事件手続法200条3項)、預貯金債権についての仮払いの申立てが認められることになりました。ただし、他の共同相続人の利益を害しない限りという条件があります。
改正前も、遺産の仮の分割の仮処分という方法がありましたが(家事事件手続法200条2項)、共同相続人の「急迫の危険を防止するため必要があるとき」に限られており、要件が厳格であったため、預貯金債権の場合に限り、上記のように、要件を緩和して、仮の所得を認める規定が制定されました。
(2) 家庭裁判所の判断を経ずに、預貯金の払戻しを認める場合
各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち、その相続開始の時の債権額の3分の1に当該共同相続人の法定相続分を乗じた額(ただし、預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする)については、単独でその権利を行使することができる旨が、規定されました(民法909条の2)。
法務省令で定める限度額は、150万円です。
相続開始後から遺産分割までの間、裁判所の判断を経ずに預貯金の払戻しを受けられるようにして、相続人の負担を軽減できるようにした規定です。
共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでもその協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができると、定められました(改正法907条1項)
そして、遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる旨が、規定されました(改正民法907条2項)。
ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、請求できないこととされています。
遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる(改正民法906条の2 第1項)。
前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない(改正民法906条の2 第2項)、との規定が定められました。
この規定は、相続開始後、遺産分割前の処分についての規定です。
相続開始前に処分された財産については、今までと変更はありません。
この規定により、財産の処分をしたのが共同相続人の一人又は数人である場合には、遺産分割の際に処分をした財産を遺産の範囲に含めることについて、財産を処分した共同相続人以外の共同相続人の同意があれば、当該財産を遺産の範囲に含めて遺産分割ができることになります。
遺産分割前の財産を処分した共同相続人が、財産を処分しなかった場合よりも利得を得るという不公平が生じないようにするための規定といえます。
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